教育の課題  《シュタイナーの人間観》

大村裕子の著書より抜粋

 

人間が成長するということは「身体、生命体、感情体、自我」が成長するということ、これらの成長に伴って「意志、感情、思考」の力を獲得することでもあります。同時にそのプロセスの中で「身体、心、精神」を具えた人間として完成の道をたどるのです。

人間はある決まったプロセスを辿って成長します。教育とは子供がそのプロセスを辿って成長することを助けることです。

生まれてから歯の生え変わる七歳頃までに、子供の身体の基礎ができあがります。生まれた時に標準では3000gぐらいの赤ちゃんが一年経つと体重は約3倍、身長で約1.5倍になり七年経つ頃には骨格、内臓、循環器もしっかりし、人間として基礎的な身体の機能が整えられます。この間子供は全力を挙げて身体を作ります。この身体の成長期にものを覚え込ませたり、芸を仕込んだりせず、子供の生命体がひたすら身体を作ることができるよう、手助けをすることが必要です。

身体が成長している時に知識を詰め込めば、子供の生命体は萎縮してしまい、十分に働くことができません。生命体が働きやすくするには、子供を刺激の少ない環境においてあげることが必要です。

子供の乳歯が永久歯に生え変わる頃から子供の内で豊かな感情が育ち始めます。勿論それ以前にも感情はあります。7歳頃からの子供の感情の表れ方は本能に支配される感情ではない崇高な思い、美しいものへの憧れ、気高い存在に対する尊敬、不正義な行いに対する怒り、弱いものへ向ける憐れみ、などが生まれます。

豊かな感情を育てている頃の子供たちにしてあげなければいけないことは、「芸術教育」です。

私たちは素晴らしい光景に出会うと心が動きます。美しい音を耳にすると心が動きます。子供たちが感動する環境を整えなければならないのです。

激しい言葉、暴力的な行為、騒がしい音などは子供の豊かな感情を損なうばかりです。

13、14歳頃になると子供は思考を始めます。「これをこう動かすとこうなる」「これとそれとはこの部分が似ているから同じ種類だ」というようにこれと、それがどのような関わりかたをしているか、ということに興味をもつようになります。これが思考の始まりです。思考の力を育てるにはよく見ること、よく聞くこと、よく嗅ぐこと、よく触れることがとても大切です。感覚を使って自然の現象を観察し、その中で働いている法則を認識することが思考なのです。

子供たちは観察すること、事実を探ること、体験することで思考の力を獲得し、自我を育てます。

この頃の子供たちには自然科学、社会科学を学ぶことによって思考力を獲得します。

 

上記はシュタイナーの人間観について書かれていたものを抜粋しました。

近頃、体育の家庭教師を求める家庭がふえているそうです。入試勉強などに体力がついて行かないのです。この話しを聞いてシュタイナーの人間観を改めて考えました。身体を作っている時期にはそれに専念することが良いのかもしれません。勉強はその後からでも十分間に合うようです。

小倉充倭子さんの書かれた「天才とキンピラゴボウの作り方」という本があります。3人のお子さんがいらっしゃるのですが3人とも15歳までの成績はオール1。しかし、中学卒業で大検に合格したりイタリアへ国費留学、国立大入学など、とても考えさせられる子育てを実践した方です。宮本哲也さん同様、お子さんの教育についてお考えの方にはおすすめの本です。